Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2011年5月11日水曜日

僕と共犯者に成りませんか?『ラフォーレ原宿:ヘンリー・ダーガー展』

僕の敬愛する、世界最大の作家・画家の一人、ヘンリー・ダーガー。 彼の作品が来日する機会に、何とか参加出来ました。
アウトサイダー・アートとは何ぞや?という方は
こちらに色々と書いておりますのでご覧になってみて下さい。
個人的な「アール・ブリュット」と「エイブル・アート」の違いまとめ

日本に来るのは二度目。
貴重なチャンスをモノにする為、コレを見る為だけに恐ろしい移動費を費やしました・・・。
くっ、懐が疼くぜェ・・・

画集や雑誌等、彼の図版は何度か見ていたものの、本物が見れて良かった。
本物を見た事で感じられたモノ、
それは『彼に関する全てが、バックグラウンドも含めて、閲覧者にとって作品』だということです。
作品自体の破れ・修正、スクラップ帳、ちびたクレバス、干からびた絵具、資料をまとめていた麻縄。
様々なモノが展示されていたのですが、
そこに彼の何十年の歴史が、何億回もの試行のあとがあって、
配色のセンスがどうのとかデザインの斬新さがどうのこうのとか
そういう「分かる人の為の技巧論」みたいなのを全て消し飛ばして
「果てしない量と時間の、一人遊びの強度」を心にダイレクトに叩きつけられたように思います。
孤独さ、力強さ、美しさ、汚さ、宗教性、神秘性、熱狂、生、死、性、願い、絶望、希望。
全てが在りました。
目頭が熱くなった。

彼の「作品」は作品であって作品で無い。
紙の、しかもスケッチブックとかボール紙とかじゃないペラッペラの紙の、表裏どちらにもびっしりと描きこみが為されています。それを上手くどちらも見れるようにしてある展示方法は中々良かったです。
ガラス板を嵌めこんだ、丁度上から見ると三ツ矢サイダーのマークの様な壁が何枚も置いてあり、
壁と合わせてまるで迷路を創り出しているかのような。
グルグルと絵を廻って見ている内に、徐々に「王国」に迷い込んでいくような心持がしました。

忘れてはならないのは、
彼のファンになればなるほど、観客は彼を踏みにじる冒涜者に変貌していく、ということです。
彼は言いました。
「私がココを引っ越したら、中に在るものは全て焼き払って下さい」
彼にとって『非現実の王国で』は単なる作品ではありません。
彼の人生、彼の為だけの王国だったのです。

それをあろうことか大衆の目に晒し、分割し、中には高額で彼の作品を取引し。
後述する著名人の中に、ドヤ顔コメントというか、なんというかみたいのを書き込んでいる人がいました。
「ダーガーの作品と暮らす事にしました」

踏みにじる事に上も下もありませんが、
「彼の作品を見る事」「彼の作品を持つ事」、
それらが彼の望まない事だとしっかり心に刻みつけた上で作品を見て頂きたいと思います。
展覧会に来ようとした、彼の作品を見たいと思った。
既にそこからあなたはダーガーの王国の侵犯者、ダーガーに対する裏切り者なのです。

で、著名人が彼と彼の作品に対するコメントをしたものが展示してありました。
斎藤環、菊地成孔、リリー・フランキーなど。
個人的にやくしまるえつこのコメントというか詩が逸品だったので、うろ覚えながら載せておきます。
大分違うと思います。自信あるのは最後の一行だけ。
やはり彼女はずば抜けたセンスの持ち主です。

『現実から遠く離れた国で、少女たちを守れ』


その言葉に 血湧き肉躍り
私達は非現実の王国へ 喜び勇んで飛び込んでいく
革新の日


でも、ヘンリー あなたと目が合う事は無い 

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ヘンリー・ダーガー展
〜アメリカン・イノセンス。純真なる妄想が導く「非現実の王国で」
作家:ヘンリー・ダーガー
会場:ラフォーレミュージアム原宿 (ラフォーレ原宿6階)
東京都渋谷区神宮前1-11-6
会期:2011年4月23日(土)〜5月15日(日)
11:00〜20:00 [5月15日(日)は18:00まで]
料金:一般800円 / 学生600円
※ 小学生以下、ラフォーレカード会員は無料
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ダーガーフォロワ―でもある、日本人女性漫画家の描く、変で残虐で少女趣味な世界。
➼ずんどこ耽美、ポップに残酷を楽しむ『創世記』

「ダーガー」と「セーラームーン」に関係性を見出した人。
➼『戦闘少女の精神分析』要旨「ファリックガールズが生成する」個人的まとめ
唯一の日本語画集。 動く『王国』。



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