Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2016年10月17日月曜日

早見純「美少女・殺人オーディション」


早見純「美少女・殺人オーディション」
怖さ:☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆



ホラー漫画の宣伝と共に、紙文化すげぇんだぞ、ってのも言いたいこの「1日1ホラー」なのですが、故に「作品毎」ではなく「単行本毎」に取り上げたい、という気持ちがあるんだけども、このコンビニ本は早見純単行本未収録のために買わなくてはならん本なのです。

一度サイン会で早見先生にはお会いしたんだけども、非常に温和な雰囲気の方で、「何描こうか?」って聞かれて、作品タイトルがぱっと思い出せないまま、「あの、えー、父親と暮らす娘が、実は世界が滅びてるってヤツの、で実は娘が体がグジャグジャになってて、そのグジャグジャの娘を、えー」みたいな無茶苦茶なリクエストの仕方をしたのに上手く汲み取って描いて下さってありがとうございます、早見先生。

で、「恐ろしいものが描ける」ってのは同時に「自分の中に恐ろしいものを押し込むことが出来る」→「自分の恐ろしさを制御出来る」=「優しい」ってことではないかと思ったんですよ。

また、今『バーナード嬢曰く』のアニメが放映されてる施川ユウキさん原作の『少年Y』。「文系のデスゲーム」とでも表すほかない、そうした作品群の定型を押さえた上での、それらの裏をかくトリッキーさ、内省性。ああ、施川ユウキって滅茶苦茶頭良いな、と。「ギャグを描ける」人は「何が人にウケるかを意図的に打ち出せる」→「狙って人の感情を動かせる」=「頭が良い」と思うんですよ。

つまり何が言いたいかと言うと、この作品は「早見純の優しさと頭の良さが詰まった作品」だということなのです。

「一冊二殺惨殺」に登場した大山田を、単なる失敗者としてではなく、早見ワールドに準レギュラーとして採用した、ようにも思えるキャラクターの使い方。
そして、読者をあの早見ワールドに一挙にぶっ飛ばす、闇がトップリ溶け込んだ絵柄と展開。

ここまで書いて、最後に言いたいのは「これホラー漫画じゃない!!!」
…ワクワクしながら読んで、ジワジワとイヤな方向に解ける警戒、なオチ。


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