Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2017年1月27日金曜日

押見修造「真夜中のパラノイアスター」


押見修造「真夜中のパラノイアスター」
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆
状況:☆☆☆


「描き下ろし青春マンガアンソロジー コミック焦燥」より。

押見修造「真夜中のパラノイアスター」。
既に「大作家」となりつつある押見修造さんのデビュー最初期策ながら、未だ「焦燥」以外の本には未収録。

菅田は超能力者である。
殺意と共に対象を指差すことで爆破出来る。
が、その能力を使うことを禁じており、特に他に得意なことも無いので、30歳を越しても愚鈍に、穏やかに、コンビニでアルバイトをしている。
彼にとって、小倉慶子(18)は、ヒロインである。マドンナである。
彼女が菅田に、ちょっと聞いて欲しいと話し掛けて来た。
菅田は、何かあるのか!?と期待を込めて耳を傾ける。

「私実は…彼氏が出来ちゃったんですよおー」

感情が爆発してしまった菅田が、小倉さんに対して衝動をぶつける様は、単純な絵の上手さは別として、現連載作品『ハピネス』の暴力描写を優に越えます。
男が女に対して、身一つで、性行為無しに出来る「暴力」が、全部詰め込まれた様な。
陰毛を噛み千切り、それを相手の口の中に入れる、そんな衝動、俺の中にはありませんでした。
で、コレで終われば、まぁ変な言い方ですけど、不条理気味の「青春マンガ」として受け取ることも出来なくはない、かなぁ…なのですが、オチが完全に「スプラッター」。というか超能力者という前置きが、オチのためにしか存在しない。
でも、この「爆発した際の菅田」の「ディスコミュニケーション感」、何を言っても小倉さんへの暴力を止められなさそうな勢いは、とかく恐ろしいものがあります。
オチでホラーとギリギリ定義出来るかどうかみたいな作品ではありますが、その菅田の描写だけでもサイコホラー味ある作品。

こういうので1冊くらい、出してくれないかなぁー押見先生…。

ちなみに「焦燥」は現在絶版で結構手に入れにくいコミックですが、
収録作品はそれぞれ単体でAmazonより電子書籍を購入出来ます。
お値段も1作品100円と気軽に出せる値段なので、是非ともこの恐ろしい世界の片鱗を味わって下さい。


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