Subbacultcha

「サブカルチャー」という括りの下、文学・芸術・漫画・映画等について述べます。

2018年1月12日金曜日

日野日出志 『地獄の子守唄』




日野日出志 『地獄の子守唄』
怖さ:☆☆☆
造型:☆☆☆
状況:☆☆☆

☆満点作品です!



日野日出志短編集。
短編集としても抜群に良く、勿論同じひばりの『幻色の孤島』『わたしの赤ちゃん』なんかも優れた短編集ですが、本としての良さで本作は群を抜いています。
「七色の毒蜘蛛」「蝶の家」「らくがきコーナー」そして「地獄の子守唄」。

「私小説のみが文学である」が誰の言葉かは忘れましたが、
『地獄の子守唄』収録作が全般的に、怪奇と恐怖にとりつかれた漫画家の恐るべき半生を描き出す「私漫画」的側面を備え、「一冊の作品」としての強度が高い単行本となっています。加えて、表紙絵も。
…長じてから、あくまで漫画内と漫画家の日野日出志はそれぞれ別の存在である、ということを学んだものの、幼少期に「コレ」を読んだことで、かなり「日野日出志」のイメージは固着されたものです。

また、幼き日に「地獄の子守唄」読み、「自分はコレを読んでしまったがために死んでしまうのだ」という強烈なトラウマを植えつけられました。
「死」。

死や恐怖は、生に対してマイナスなイメージを持ちますが、
死を知ること・恐怖を知ることはマイナスにはならない、と思います。死について考えなくては生の厚み・豊かさを知ることは出来ない。ちょっと変なまとめ方ですが、幼少期に「地獄の子守唄」に出会えたことは、自分にとって幸せなことだったと思います。
その短さゆえのコンパクトさ・ショッキングさ・濃さは、その後描かれた本作の完成形的作品『地獄変』を上回るもの、と思います。




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